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漢方薬の西洋医学的エビデンス(臨床応用される科学的根拠)について。最近の知見から。 (漢方・皮膚科情報)

最近では漢方の効果について広く認知されるようになりました。自分が漢方の良さを知り学び始めたころは、同期の医師たちにその有効性について話すと、一笑に付されることしばしばでした。それはエビデンス(科学的根拠)がはっきりしなかったからだと思います。しかし最近は漢方薬成分の科学的研究が進み、効果に医学的根拠があることが多く明確になってきました。
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「グレリン」という消化管ホルモンの一つがあります。グレリンは消化管運動の促進作用と強力な食欲増進作用を持っています。最近の研究で、漢方薬の「六君子湯(りっくんしとう)」は、このグレリンの「分泌促進」「代謝分解の阻害」「感受性増強」などに作用することが、ラットを使った動物実験などで分かってきました。六君子湯は、食欲不振や胃腸機能の改善に効果がある漢方薬です。このことから六君子湯の消化管に対する効果は、グレリンを介している可能性が科学的に分かってきたのです。
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詳しい専門的な話は割愛します。六君子湯は約500年前に確立した方剤で、蒼朮(そうじゅつ)・人参(にんじん)・半夏(はんげ)・茯苓(ぶくりょう)・大棗(たいそう)・陳皮(ちんぴ)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)の8つの生薬からできています。生姜に含まれるショーガオールやジンゲロールがアドレナリン受容体を介してグレリン分泌を促進しています。また生姜に含まれるジンゲロールと茯苓に含まれるパキマ酸は、グレリンの代謝・不活化を阻害しています。さらに、蒼朮に含まれるアトラクチロジンは、グレリンの受容体の感受性を高め活性を高めています。このように六君子湯の効果に西洋医学的なエビデンスがあることが明らかになったわけです。
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六君子湯は、気虚・脾虚と言って「気力がなくなり消化吸収が衰え疲れやすい虚弱な状態」を治す漢方薬です。最近では抗がん剤などを使用して、食欲が低下し胃腸機能が衰えた状態を改善するために使用されることも多いようです。皮膚疾患でも、「気虚・脾虚を伴ったニキビやアトピー性皮膚炎に六君子湯が治療の手助けになる」ことがあります。
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グレリンの受容体作動薬が現在欧州で承認申請中との事です。今のところグレリンを促進、活性化する薬はまだありません。と言うことは、六君子湯はすでに約500年も前からグレリンを促進し活性化していたことになります。
人類の知恵と経験の凄さを漢方に見た気がします。
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<21/10/2016 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>