最近アトピー性皮膚炎の新たな治療薬が世に出てきています。
一般的には、ステロイド外用薬、免疫抑制外用薬(タクロリムス)、保湿剤、抗アレルギー内服薬が主な治療手段です。当院では漢方薬も多用しています。
昨年よりJAK阻害剤によるアトピー性皮膚炎の治療が加わりました。昨年は外用剤。近々内服薬も出るようです。
もちろんこれらでアトピー性皮膚炎が治ってしまうとか、体質が変わるとか、ということではありません。
あくまでも治療の選択肢の一つであることをお忘れなく。
で、JAK阻害剤について簡単に勉強し直しました。
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アトピー性皮膚炎発症の要因として、主に3つ挙げられます。
①皮膚の生理機能の異常(バリア機能の低下、発汗の恒常性維持の低下など)
②免疫学的要因(リンパ球主体の免疫応答反応性の亢進)
③外的要因(掻破行動、日光、ダニ、ハウスダスト、花粉、食べ物、ストレスなど)
このうちJAK阻害剤は②と関連します。
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皮膚のバリア機能が低下したり障害を受けたりすると、外部からアレルギーの元となる異物(アレルゲン)が侵入します。すると周囲の免疫細胞であるリンパ球の1種であるT細胞(Th2細胞)がその異物の情報を解析し、排除するための指示を伝える物質「サイトカイン(細胞が分泌するホルモンのようなもの)」を作成します。そして異物を攻撃する抗体を作り出すリンパ球の1種であるB細胞にその指示内容(サイトカイン)を伝達します。その指示に従いB細胞は抗体を産生し異物を排除します。
この免疫反応が亢進しすぎて自己組織を傷つけ炎症を起こす場合があります。この状態が皮膚の場合アトピー性皮膚炎です。
同じようなことが鼻粘膜で起こればアレルギー性鼻炎、気管支で起これば喘息です。
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以上の免疫応答の経路の中で、サイトカインを鍵とすると鍵穴がB細胞に存在します。この鍵穴をサイトカイン受容体と言います。
免疫応答を始める段階で、サイトカイン受容体にエンジンをかけ回路をつなぐ酵素の一つがヤヌスキナーゼ(JAK)です。
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アトピー性皮膚炎の病変皮膚の炎症にはリンパ球のT細胞の1種であるTh2細胞が関わっています。
Th2細胞が産生するサイトカインの中でとりわけアトピー性皮膚炎の炎症惹起に関わるのは、IL-4、IL-13、IL-31などです。
IL-4は、Th2細胞の誘導やフィラグリン(皮膚のバリア機能に重要な蛋白)の発現抑制などに関与します。
IL-13は単球(白血球の1種)の機能抑制などに関与します。
IL-31は掻痒の誘発に関与します。
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以上のようなサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31)がそれぞれの受容体に付着し一連のアレルギー症状の発現が始まります。それらの反応にエンジンをかけ回路をつなぐ役割を担うヤヌスキナーゼ(JAK)には、JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2の4種類があります。
通常、受容体(レセプター)に2分子のJAKが会合します。
下図のようにIL-4の場合、IL-4がB細胞の細胞膜にある受容体(レセプター)に付着すると、そこにJAK1とJAK3が会合します。これらJAKは細胞内でリン酸化され(エネルギーを獲得する)活性化します。それらはさらに遺伝子であるSTAT6をリン酸化し、一連のアレルギー症状発現の指令を出していきます。

同様にIL-13の場合関与するヤヌスキナーゼ(JAK)はJAK1、JAK2、Tyk2です。IL-31はJAK1、JAK2です。
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以上ように、アレルギー症状発現に遺伝子レベルで必要なヤヌスキナーゼ(JAK)の発現を抑制するのが「JAK阻害剤」です。
臨床応用されたJAK阻害剤であるデルゴシチニブは現在外用薬として用いられています。
現在のところ大きな副作用の報告はありませんが、吹き出物やヘルペスなどの皮膚感染症のリスクは増大するようです。
しかしながら、アレルギー症状発現の全てを抑えているわけではありません。あくまでも一部を抑制していることをお忘れなく。
治療の選択肢が増えたのは歓迎すべきことです。
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<19/01/2020 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>
アトピー性皮膚炎とJAK阻害剤