マイクロバイオーム(微生物叢)は皮膚にも存在する。そしてその乱れはアトピー性皮膚炎の悪化などに関与する。 (皮膚科情報) | 札幌市中央区の皮膚科なら宮の森スキンケア診療室

〒064-0825
札幌市中央区北5条西27丁目メディック28 3F

011-640-8180

blog
院長ブログ

マイクロバイオーム(微生物叢)は皮膚にも存在する。そしてその乱れはアトピー性皮膚炎の悪化などに関与する。 (皮膚科情報)

最近、細菌の持つ遺伝子をひとまとめにして調べるメタゲノム解析という研究手法の発達によって、
「体内に生息する膨大な数の細菌がマイクロバイオームという集団(微生物叢)を形成し、人の正常の細胞と関わり合いながら私たちの身体の生理機能をコントロールしている」
ということが明らかになって来ました。
皮膚でも同様で、皮膚におけるマイクロバイオームが皮膚の機能維持に寄与しています。皮膚のマイクロバイオームは、有害な微生物の定着を防ぎ、皮膚の免疫システムの調節に関与することが明らかになってきています。
つまり、このマイクロバイオームを理想的な状態に維持することが、皮膚の恒常的な健康維持と皮膚疾患の抑制につながると考えられています。
・・・・・・・・・・
我々の皮膚は、部位によって皮膚の構造(表皮や真皮の厚さなど)や付属器の種類や密度(毛根の数、皮脂腺などが多い少ないなど)が異なります。並行して、皮膚の含有水分量や温度、Phなどが異なります。このような違いに応じて部位別に細菌叢に違いがあることが分かっています。
例えば、顔などに多い脂漏部位(皮脂の多い部位)にはプロピオニバクテリウム属(アクネ菌など)が多い傾向があります。汗の多い湿った皮膚では、ブドウ球菌属(表皮ブドウ球菌など)やコリネバウテリウム属が多い傾向があります。
アクネ菌や表皮ブドウ球菌は、皮脂を皮脂分解酵素(リパーゼ)で分解して脂肪酸 (抗菌作用がある)とグリセリンを作り、かつ皮膚を弱酸性に保ちます。結果的に弱アルカリ性を好む皮膚にとっては有害な黄色ブドウ球菌が増えるのをけん制しています。
この有害な黄色ブドウ球菌は、とびひ(伝染性膿痂疹)の原因となる菌で、また増悪傾向にあるアトピー性皮膚炎の病変部で多く検出されます。つまり、何らかの原因で皮膚のマイクロバイオームが乱れて多様性が低下し黄色ブドウ球菌の割合が増加すると、とびひが発症したりアトピー性皮膚炎が悪化したりすると考えられるのです。
・・・・・・・・・・
今後もマイクロバイオームの研究が進むと、様々な皮膚疾患の発症と細菌との関りが解明される可能性もあります。
健康的な皮膚のマイクロバイオームを維持するためにも、日頃のスキンケアは欠かせませんね。
・・・・・・・・・・
<24/09/2018 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>