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お肌の バリア機能 と スキンケア の関係 

我々のお肌には大変優れたバリア機能が備わっています。お肌のバリア機能は、乾燥・異物侵入・細菌ウイルス感染などから我々を守る頼もしい味方です。

お肌のバリア機能には主に3種類の機能が備わっています。
①透過性バリア機能、②抗菌バリア機能、③免疫学的バリア機能です。

①透過性バリア機能:有害な物質・アレルゲン、細菌やウイルス等がお肌を通して侵入させないためのバリア機能です。体内からの水分の喪失も防ぎます。主にセラミドなどの角質細胞間脂質により形成されます。一方で角質細胞同士を固着させる細胞間接着装置の一つであるデスモゾーム、タイトジャンクションも関わっています。

②抗菌バリア機能:表皮角化細胞から分泌されたり、汗に含まれる抗菌ペプチドが主に担います。皮脂による弱酸性環境もこれに関与します。皮膚の常在菌(主に表皮ブドウ球菌)も寄与しています。

③免疫学的バリア機能:表皮内のランゲルハンス細胞や真皮内のマクロファージ、T細胞、B細胞などが関わる獲得免疫反応(抗体を作る液性免疫と直接異物を障害する細胞性免疫)によって担われています。
<29/04/2022>

これら皮膚バリア機能を阻害するなど影響を与える因子を考えることで、必要な日常のスキンケアのヒントを読み解くことができます。

A : 乾燥、湿度の低下
 季節的な要因や加齢に伴う乾燥肌傾向の進行などでお肌の角質が含んでいる水分(角質水分量)が減ると、角質の柔軟性が損なわれたりバリア機能を維持するために必要な酵素の活性が低下したりすると言われています。その結果透過性バリア機能が障害されます。
 アトピー性皮膚炎の方や高齢者など透過性バリア機能の回復能力が低下している場合、乾燥や湿度の低下の影響をより受けやすいとされています。また高齢者の皮膚では透過性バリア機能の低下を補うために角質が厚くなっています。
 さらに角質水分量の低下は、皮膚における炎症を誘発することが分かっています。

B : 機械的刺激
 ついつい痒いとお肌を掻いてしまいます。時には掻きまくって傷だらけ血だらけになり朝起きたらびっくりすることも。
 機械的刺激によるバリア機能破壊の一番の原因は掻破です。軽度の掻破行動だけであれば炎症性サイトカインの産生・分泌によりバリア機能の修復が促されるとされていますが、強い掻破行動が行われると炎症が起きます。この時起こる炎症は「タイプ2炎症」と言われ、リンパ球の一種である2型T細胞が過剰に活性化して起こります。本来寄生虫に対する生体防御反応として機能するものですが、一方でアレルギー性炎症の主な原因ともなっています。お肌の場合アトピー性皮膚炎との関りが指摘されています。
 この「タイプ2炎症」が起こると、バリア機能の重要な担い手である角質細胞間脂質のセラミドの合成を低下させます。また掻破によるバリア機能の破壊時に角層のpHが上昇(アルカリ性に傾く)し、セラミド合成に必要な酵素の活性を阻害しセラミドが減少します。さらにお肌に有害な黄色ブドウ球菌の増殖を助長します。結果的に透過性バリア機能と抗菌バリア機能を低下させます。
<16/06/2022>

C : 外来生物に由来する因子
 皮膚に付着したヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニ(アレルゲンとなるダニ)や黄色ブドウ球菌、花粉などが有するプロテアーゼ活性(タンパク質の分解を促進する)は角質のバリア機能を傷害します。これらの外来因子暴露時にはタイプ2炎症が誘導されやすくなり、バリア機能の重要な担い手である角質細胞間脂質のセラミドの合成を低下させバリア機能をさらに低下させると考えられています。

D : 心的ストレス
 心的なストレスにより、肌荒れが進んだりアレルギー症状(アトピー性皮膚炎や蕁麻疹)が悪化したりすることは日常的に見られます。一方で肌荒れやアトピー性皮膚炎に対する心的ストレスによる悪化の原因の一つにバリア機能の損傷が挙げられます。
 心的ストレスにより、脳の底部にある進化的に古い領域である視床下部が反応して、下垂体と副腎皮質からのホルモン分泌が促進され内因性のステロイド産生が誘導されます。これにより角質細胞間脂質の合成が低下し、また層板顆粒(表皮の顆粒層に存在し角質細胞間脂質へ変化する脂質と酵素を含む)の分泌低下も加わり透過性バリア機能を障害するとされています。層板顆粒の分泌は他方で抗菌ペプチド分泌を低下させ抗菌バリア機能も低下させると考えらています。

E : 炎症
 強い掻破による炎症や皮膚炎の悪化によりタイプ2炎症が進行すると、表皮角質細胞の分化(角質へと変化すること)関連蛋白、角質細胞間脂質であるセラミドの合成低下、抗菌ペプチドの低下を来し透過性バリア機能及び抗菌バリア機能を阻害します。
 また皮膚の炎症は、細胞間接着装置の一つであるタイトジャンクションによる透過性バリア機能を低下させることが明らかになっています。
<22/06/2022>

F : 治療薬によるバリア機能低下
 湿疹・皮膚炎特にアトピー性皮膚炎では様々な外用薬が使われます。
 ステロイド外用薬は炎症を抑える効果が優れています。炎症を抑制することにより、炎症によって障害を受けている皮膚バリア機能を回復させます。しかしながらステロイド外用薬によって炎症が収束し正常化した部分に塗布し続けると、脂質合成能が低下しセラミドなどの角質細胞間脂質の生成が阻害され透過性バリア機能が低下します。皮疹が改善した場合、漫然とステロイド外用を続けずに、塗布量や塗布回数を減らしたりステロイドのランクを下げたりするなどの工夫が必要です。
 タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)も同様に炎症を抑えることで透過性バリア機能を回復させます。タクロリムス外用薬の場合、正常化した部分に塗布を続けても透過性バリア機能を障害することはなく、むしろ亢進させる可能性が高いという研究結果が報告されています。
 デルゴシチニブ外用薬(コレクチム軟膏)も同様に炎症を抑えることで透過性バリア機能を回復させます。さらにデルゴシチニブによって、フィラグリン(透過性バリア機能に欠かせない角質内の蛋白質)の産生を亢進させるなど透過性バリア機能亢進作用があることを示す研究結果が報告されています。

G : 女性ホルモンの影響
 卵巣から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)卵胞ホルモン(エストロゲン)を低下させると、角質水分量が低下し(乾燥する)、低下した透過性バリア機能を回復させる作用、角質を固着させ透過性バリア機能を維持する能力を阻害することがマウスを用いての研究で報告されています。女性ホルモンは透過性バリアを維持するうえで重要な因子であることを示唆しています。
<23/06/2022>

以上のことを基に日常のスキンケアはどうあるべきかを考えます。

(1) 保湿の重要性
 季節的な要因や加齢など様々な要因でお肌が乾燥すると、透過性バリア機能が障害されます。透過性バリア機能の回復能力が低下しているアトピー性皮膚炎の方や高齢者の場合、さらに乾燥の影響を受けやすく悪循環に陥ります。保湿によって乾燥状態を改善しさらなる乾燥を予防することで、透過性バリア機能の低下を防ぎさらには回復につなげることができます。

(2) 不必要にお肌を擦ったり赴くままに掻いたりしない
 強い掻破行動で透過性バリア機能が破壊されるだけでなく「タイプ2炎症」が惹起され角質細胞間脂質の合成を低下させます。結果的に透過性バリア機能が損なわれます。さらにお肌表面のpHが上昇することで抗菌バリア機能も障害されます。日頃からお肌を愛護的に扱うこと、痒いからと言って強く掻かないよう心掛けることは大切です。

(3) 入浴、お肌の洗浄の大切さ
 お肌に異物、特にアレルゲンとなるダニや細菌、花粉などは皮膚に付着することで機能性バリア機能を低下させます。さらに炎症が起こり角質細胞間脂質の合成を低下させバリア機能をさらに低下させます。皮膚に付着したこれらアレルゲンを洗い流すことで影響を減らすことが可能です。入浴や洗顔は大切なことです。ただこの際はあくまでも愛護的に擦らないように気を付けるのが重要です。

(4) ストレスを溜めないのも大切なスキンケア
 心的ストレスは副腎皮質からのステロイド産生が誘導されます。これにより角質細胞間脂質の合成が低下し機能性バリア機能が障害されます。また抗菌バリア機能も低下します。仕事や対人関係、さらにはコロナ禍やウクライナ情勢などストレスの種は尽きません。やはり気分転換や適度な運動が一番の良薬と言えるでしょう。

(5) 湿疹・皮膚炎の治療を怠らない
 炎症が皮膚に存在するだけで透過性バリア機能及び抗菌バリア機能が阻害されます。アトピー性皮膚炎をはじめ様々な湿疹・皮膚炎を放置せず治療することはバリア機能の維持にとって重要です。

(6) 外用薬を目的に応じて上手に使う
 炎症を速やかに抑えることに長けているステロイド外用薬ですが、改善した後は漸次ランクを下げるなど工夫するとよりバリア機能の維持に役立ちます。またアトピー性皮膚炎の場合、タクロリムス外用薬(プロトピック軟膏)やデルゴシチニブ外用薬(コレクチム軟膏)などを併用することはよりバリア機能の正常化及び維持亢進につながります。

以上のように特にお肌にトラブルを抱えていない時も皮膚のバリア機能の維持にスキンケアは大切です。特にアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の場合、皮膚に存在する炎症を治療し軽減することが重要です。
<26/06/2022>

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