痒みとは「掻破したくなるような皮膚の不快な感覚」のことです。
痒みは私たちの体を守ってくれる防御反応の一つです。
皮膚に異物が付着したり皮膚を通して侵入したりした時に、異常が起きてる場所を知らしめ、それを掻破することによって除外するように脳が仕向けるのです。
アレルギーなどとも絡み、免疫応答の一部でもあります。
虫刺され、かぶれ、水虫など、痒みが生じている皮膚には炎症が起きています(湿疹・皮膚炎)。ここでは皮膚における細胞(免疫細胞、肥満細胞、角化細胞など)がサイトカインを産生し痒みを起こします。
皮膚に異物が付着したり皮膚を通して侵入したりした時に、皮膚内で痒みを引き起こす物質が産生されます。
その物質は大きく分けて、二つに大別されます。
「ヒスタミンか、ヒスタミン以外か」
皮膚において「ヒスタミン」は、主に肥満細胞や好塩基球から産生されます。これが皮膚にある末梢神経上の受容体(鍵穴のようなもの)に結合して神経を活性化し、脊髄を中継し脳に伝わり、痒みとして認識されます。
ヒスタミンにはその他、血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用があります。
ヒスタミンによる痒みは、いわゆる抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)で抑えられます。
蕁麻疹や花粉症による痒みは、ヒスタミンが主な痒み物質として働き、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)により効果的に抑えられます。
しかしながら一方で、アトピー性皮膚炎などの湿疹、痒疹、尋常性乾癬などで生じる痒み、透析を受けている患者さんに生じる痒みの一部は、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)は必ずしも有効とは言えない場合があります。この場合ヒスタミン以外の痒みを起こす物質が関わっている可能性が考えられます。
では、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)で抑えられないヒスタミン以外の痒みを引き起こすものにはどんなものがあるのでしょうか。
「ヒスタミン以外」の物質には、リンパ球の一種であるT細胞の仲間のTh2細胞から産生される炎症性サイトカインと表皮角化細胞から産生される炎症性サイトカインがあります。
皮膚に炎症が起こると、Th2細胞から、IL-31(インターロイキン31)、IL-4、IL-13、IL-17が痒みを誘導するサイトカインとして産生されます。
IL-31の受容体(IL-31を受け取って痒み刺激を伝達する)は痒みを伝える末梢神経上に発現しており、特にアトピー性皮膚炎や痒疹で発生する痒みに関わっていると考えらっれています。
IL-4、IL-13の受容体(これらをを受け取って痒み刺激を伝達する)も痒みを伝える末梢神経上に発現しており、痒みを引き起こしていると報告されています。
IL-31は急性期の、一方のIL-4、IL-13は慢性期の痒みに関与していると考えられているようです。
IL-17は、関節リウマチ、喘息、全身性エリテマトーデスなど、免疫/自己免疫と関連した多くの疾患と関連付けられており、皮膚疾患では尋常性乾癬との関連性が指摘されています。IL-17も、痒みを伝える末梢神経を刺激することが知られています。
T細胞から産生される炎症性サイトカインの他に、表皮角化細胞から産生されるTSLP(thymic stromal lymphopoietin)も痒みを引き起こす物質であることが分かっています。これはアトピー性皮膚炎の方の皮膚に高発現していることが知られています。
その他、痒みを起こす物質に、PAR2(protease-activated receptor2)、Substance P、MRGPR(mas-related G protein-coupled receptor)などがあります。
PAR2(protease-activated receptor2)は、表皮角化細胞や痒みを感じる末梢神経に発現しています。これが刺激されると痒みを惹起します。
Substance Pは、神経の末端から放出される神経ペプチド(アミノ酸がペプチド結合で結合した化合物)の一種です。皮膚炎や痒みの増幅に関与することが分かっています。
MRGPR(mas-related G protein-coupled receptor)は細胞膜上の受容体で、肥満細胞(ヒスタミンを産出する)と神経細胞上に発現しています。これによる痒みは立ち上がりが遅く持続する痒みと言われています。
以上のヒスタミン以外の痒み物質をいかにして抑えるか、すでに実用化されているものもありますが、目下研究中でありその成果が待たれます。