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誰にでも起こりうる 円形脱毛 について。脱毛部分で何が起こっている?

脱毛症とは、正常な毛の生えかわりと比べて、それよりも多い量の毛が抜ける状態のことです。
頭髪の脱毛症を来たす皮膚疾患には様々あります。
脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎などの頭皮に起こる皮膚炎は痒くて掻いて脱毛することがあります。
いわゆる男性のAGA(男性型脱毛)も脱毛症の一つです。男性ホルモンの影響で毛の生えかわりが加速し、抜け毛が増え薄毛となります。
代表的な脱毛症は、やはり円形脱毛症でしょうか。
円形脱毛症は、一般的には境界明瞭な脱毛斑を呈し、成長期(毛髪の伸長が活発な時期)にある毛包の毛球部(毛髪を作るところ)における自己免疫応答による脱毛疾患です。
自己免疫応答とは、本来細菌やウイルスなど外敵にたいする攻撃を行う免疫システムが、何故か自分自身の組織に向いてしまう状態です。
円形脱毛症の場合、自身の毛髪を作る毛包周囲に対する自己免疫応答が起こっているのです。毛包周囲にはリンパ球主体の炎症細胞浸潤が起きています。これにより毛髪の破壊と産生障害が起こり脱毛が生じるのです。

原因はいまだに明確にされていません。精神的、肉体的ストレスとも言われていますがはっきりしません。それらがきっかけ(誘因)になっているとも言われていますが、それも明確ではありません。

円形脱毛症では、毛をつかみ軽く引っ張る脱毛テストで毛根部が先細りとなる「萎縮性成長期毛」が見られます。頭皮の毛穴付近で毛髪が先細りとなる「漸減毛」や途中で断裂した「断裂毛」が観察されます。これらは毛髪の毛包周囲での破壊を示唆しています。

円形脱毛症には急性期と慢性期の2極があると考えれています。
急性期では、毛髪の破壊を示す所見(萎縮性成長期毛、漸減毛、断裂毛及び病理組織的には毛包へのリンパ球浸潤など)が顕著です。慢性期に入るとこれらの所見が目立たなくなります。
つまり急性期では、免疫応答によって毛球部(毛髪を作るところ)に炎症による障害が起こり脱毛が促進されます。その後毛包は立毛筋(鳥肌が立つときに毛を立てる筋肉)の付着部より深いところを退縮させ休止期(新たな髪の毛を成長させるための準備期間)に入ります。休止期の毛髪は自己免疫応答の標的になりにくいとされ、炎症が収束していきます。この症状が固定される時期が慢性期とされます。この慢性期における成長期への移行が遷延する毛周期の異常が、円形脱毛症のメインの病態とされています。

このように円形脱毛症が進行する過程では、ミクロ的に意外とダイナミックな変化が起きているのです。
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<2023/11/15 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>