アトピー性皮膚炎 と 汗 の関係  | 札幌市中央区の皮膚科なら宮の森スキンケア診療室

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アトピー性皮膚炎 と 汗 の関係 

汗は主に塩化ナトリウム(NaCl)、カリウム(K)、重炭酸イオン(HCO₃⁻)などからなり、免疫グロブリン、抗菌ペプチド(殺菌作用がある)、乳酸、尿素などを含んでいます。
体温調整に関わる発汗機能以外に、これら汗に含まれる成分は皮膚表面の保湿作用、感染防御などに関与し、身体及びお肌の恒常性の維持に大切な役割を果たします。
汗はお肌の健康維持に必要である反面、アトピー性皮膚炎では汗は悪化因子でもあります。

○汗の成分(塩化ナトリウム、尿素など)が直接的な刺激になり症状を悪化させます。
○遷延する皮膚炎により汗腺組織と汗の排泄機能に障害が生じ、汗が皮膚組織内で漏出、発汗低下し、これに伴い皮膚が乾燥します。その乾燥がバリア機能の低下につながります。
○発汗低下により汗中の抗菌ペプチドの量に変化が生じ、皮膚の常在菌に影響し皮膚表面の細菌や真菌の増殖を許してしまいます。その結果感染を来たし皮膚炎を悪化させ、さらにバリア機能を低下させます。
○最近の知見ですが、皮膚の常在真菌である癜風菌(マラセチア)に由来する抗原が汗に混ざり、汗を介して感作を起こしアレルギー症状を悪化させることも分かっています。
○これも最近の知見ですが、アトピー性皮膚炎の汗にはグルコース(ブドウ糖)が多く含まれています。ただ糖尿病などの耐糖能異常の合併はないようです。汗中グルコースの濃度が高い程アトピー性皮膚炎の重症度も高いようです。動物実験では、汗中における高濃度グルコースはバリア機能の回復を遷延させる可能性が示唆されています。

アトピー性皮膚炎は、一般的に汗の多い夏に悪化すことが多く、それには汗が大きく関わっているとされています。
上記のように色々な汗に関する因子が関わっているのですが、汗中のグルコースも関連しているなど新しい知見も多くあります。
学ぶべきことはまだまだ多いです。
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<21/04/2022 札幌市 中央区 皮膚科 宮の森スキンケア診療室>